日本ワインができるまで

製法について

 ワインの製造プロセスは、ブドウの収穫⇒搬入⇒破砕(圧搾→マスト製造)⇒発酵⇒安定化(→殺菌・濾過)⇒熟成(貯蔵)⇒ブレンディング・仕上げ⇒瓶詰め・ラベル貼り⇒貯蔵、である。







                                             

貯蔵について

熟成と貯蔵

 ワインの貯蔵に用いられる容器は、実際上、ステンレススチール製タンクである。木樽を貯蔵目的のみに用いるのは、木樽が高価で、樽使用中の労働コストも馬鹿にならないので、消費者が樽香をつけただけの高価格ワインを評価するとは思えない。樽の大きさは2004,000ℓ位である。ちなみに、熟成目的の樽はオークを用いて、貯蔵目的の樽はレッドウッドを用いて作られている。貯蔵目的だけの大きな木樽の使用は近代ワイン製造では非常に稀である。これに対して、ステンレススチール製タンクは、機密性が高く、温度調節ができるので、タンク一杯にワインが入っていればワインの酸化は少ない。たとえワインがタンクに満たされていなくても、ヘッドスペース(タンク内のワインで満たされていない上部の空きスペース)を窒素ガスで満たせば、ワインは酸化しない。

 フルーティーで、アロマが弱い白ワインは長く熟成させない。容器はステンレススチール製タンクか、ガラスボトルで十分である。フレッシュさとフルーティーさに乏しいが複雑味のあるセミ・フルボディーの白ワインは大樽あるいはステンレススチール製タンクで熟成すれば、ある程度品質が改善される。十分なボディーと強いアロマやフレーバーに富む白ワインは、樽熟成しても、もとの香味を失わず、酸化による褐変に耐えるので、数ヵ月~1年間樽熟成しても良い。ヘビーで甘口の白ワインもまた樽貯蔵で品質が改善される。いずれにしろ、白テーブルワインは、赤テーブルワインやデザートワインほど熟成を必要としない。とはいっても、日本で収穫されたシャルドネや甲州ブドウは、バラエタルアロマが弱く、また呈味成分も乏しい傾向にあるので、プレミアムワインとして販売するには何らかの付加価値をつけねばならず、その際、よく使われる手段は、これらのワインの樽発酵あるいは樽熟成である。しかし、オークの木香をつけただけのワインに、消費者が高い価値を見出すかどうかは疑問である。

 ある方向から見ると、熟成とは、様々なワイン成分の中で、それらが存在する環境内で反応性の高い成分の活性が収まるのを待つ期間の反応といえる。熟成中、様々なワイン成分が相互に反応するが、主役は酵素が関係しない酸化(重合)反応の対象であるポリフェノールであろう。これには、ポリフェノール同士の反応による重合体の生成以外に、ポリフェノールとタンパク質との反応も含まれ、いずれも濁りの生成から容易に判別できる。もちろん白ワインの褐変は無色ポリフェノールの酸化によるものであるが、ポリフェノール量が少ない白ワイン(250340 mg/ℓ)よりも、ポリフェノール(赤色色素アントシアニンを含む)が多い赤ワイン(1,1002,900 mg/ℓ)のほうが熟成の主たる対象である.

 ライトボディーで、フルーティーさを特徴とする赤ワインは、樽熟成しない。フルボディーの赤ワインは、品質が良くなる保証はないが、普通、12年間1015℃で樽熟成する。樽材用のオークには、ヨーロッパオークと北アメリカオークがある。両者間には、ワインに抽出されるエキスとフレーバーの種類と量に大きな差がある。一般に、アメリカオークは‘オークのにおい’が強く、ヨーロッパオークは‘タンニン性のボディー’が多く、アメリカオークの約1.5倍のエキスが抽出される。樽板から樽を組み立てるとき、樽の内壁を焼く。これをトーストという。トーストの度合いで木の化学的、物理的性質が変化し、樽貯蔵されたワインの組成や官能的性質に影響する。一例を挙げれば、トーストの程度が低いと、より多くのポリフェノールやオーク成分が抽出され、オークの香りと味が強いワインができる。トーストの程度が強ければ、ローストされたコーヒーやスパイスのような香ばしいにおいがつく。よく使われる樽の内容積は、200ℓ、220ℓあるいは250ℓのものである。貯蔵室の相対湿度によるが、湿度が6065%より低いと(乾燥状態)、水がアルコールよりも速く失われ、逆に湿度がそれより高いと(湿気があると)、アルコールのほうが早く蒸発する。200-容樽を用いたとき、この蒸発によるワインの損失は、25%(410ℓ)に達する。このような蒸発により、樽内に大きなヘッドスペースができ、壁が乾燥すると、空気が容易に入るので、ワインの酸化が起こる。そこで、ヘッドスペースのチェックを絶えず行い、ワインを注ぎ足している(トッピングという)。オーク樽熟成の主たる目的は、第一に、ポリフェノールをゆっくりと酸化させ、その一部を重合、沈殿させる、第二にワインにオークフレーバーを加え、またブーケの複雑性を加えることである。

 木樽の命は短い。新樽は短期間、たとえば1年間に3回あるいはそれ以上、別々のワインの熟成に用いることもできる。新樽も3年経てば古樽と呼ばれるようになる。一つの輸入新樽(220-ℓ)は約10万円、その購入コストと作業コストも高価なので、樽発酵や樽熟成に見合った、特別に品質のよいワインの熟成のために使われるべきである。樽の維持には非常にコストがかかる。新樽の一つの使い方として、最初の1~2年間、シャルドネのような白ワインの熟成、その後3年間はカベルネ・ソービニヨンのような赤ワインの熟成のために使い、その後さらに数年間ワインに樽香がつくことを期待をせず、製造容器として利用しているワイナリーもある。いずれにしても、10年も使わないうちに、植木鉢用として転売される運命が待っている。


ブレンディングと瓶詰め

 並級ワインであろうと高級ワインであろうと、ブレンディングはワインの欠点を薄め、ワインにバランスと複雑性を与える。目的もなく、技術もなく、また製造者の感覚でブレンディングを行うのは最悪で、平凡で、おいしい味のワインを造るに終わる危険がある。ブレンディングには必ず明確な目標が必要である。ブレンドする主テーマは、色調、芳香、アルコール、ボディー、味、木香臭であろう。官能検査とともに、できるだけ詳しい物理的、化学的分析が必須である。重要なブレンドのタイプは、(1)数種のブドウ品種から造られたワインをブレンドする。(2)同一品種であるが、異なった地域で栽培収穫されたブドウから製造したワインをブレンドする、(3)同一のブドウ品種から複数年に製造したワインをブレンドする。2種のブレンドするワインがあれば、311113などに混合することがブレンドの基本である。最終的なブレンドワインが決まったら、もう一度、ブラインドテストを行う。望ましいブレンドワインができたならば、そのときのブレンディングの容量をさらに大規模(40200ℓ)にし、樽かタンク内で、瓶詰め前の36ヵ月間、色々な温度で熟成させ、混濁形成の有無を確認する。ワインを瓶詰め前、数週間貯蔵してワインの安定性をチェックすることが必要なのである。世界のワイン製造者の中には、ブレンディングがワイン造りの命、芸術であると主張する者がいるだろう。フランスは、ブレンド技術の元締めとして名声を博してきた。フランスでワイン造りを学んだ人の中には、この伝統を受け継ごうと必死の者がいる。一方、ワイン新世界諸国では、単一ブドウ品種から造られたワインが多く瓶詰めされている。各ブドウ品種のもつバラエタルアロマやフレーバー、同じ品種でも栽培地の相違によるワインの品質の違いなどを楽しむ文化が醸成されている。ほとんどの国では、ラベル上のブドウ品種、収穫年、収穫地の表示する場合の基準を設けている。日本では、もしもラベル上に1種類のブドウ品種が表示されるならば、ボトル中の最低85%のワインがそのブドウ品種から造られたものでなければならない。同様に、日本のワイン製造者が収穫地や収穫年の表示をしたければ、同様に85%基準に縛られる。


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