日本ワインの特徴

日本ワインの特徴


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・日本ワインとは?
・ワインの味わい
・ワインコンクールの結果から見える日本ワインの特徴
・アロマが穏やかな日本ワイン
九州のワイン



日本ワインとは?

 日本ワインとは、日本で栽培されたブドウを用い、日本で造った純日本産ワインのことである。
 農林水産省の調べによると、平成25年(2013年)、日本ワイン製造のために(一品種)300トン以上が用いられたブドウ品種は以下の通りである。



・甲州〔日本系雑種、収穫量2,692トン、ワイン仕向率:収穫量の94.6%〕
・ナイアガラ(アメリカ系雑種白、2,189トン、93.0%)
・コンコード(アメリカ系赤品種、1,280トン、100%)
・マスカット・ベーリーA(欧米雑種赤、1,637トン、77.3%)
・シャルドネ(欧州種白品種、1,096トン、100%)
・メルロー(欧州系赤品種、2024トン、100%)
・カベルネ・ソービニヨン(欧州系赤品種、435トン、98.2%)
・ケルナー(欧州系白品種、336トン、100%)




ワインの味わい


 ワイン案内書や学術書等には、カベルネ・ソービニヨン赤ワインは、赤紫の色調が濃厚で、味わいが強く、スパイシーで重厚な風味があり、メルロー赤ワインは、イチゴの果実香と柔らかくコクのある風味をもち、マスカット・ベリーA赤ワインは、マスカットの香りはないが、まろやかな味わいとやや泥臭い果実香があり、熟成すればよくなる、シャルドネ白ワインは、力強い花様の果実香と幾分スモーキーな香りがすると、述べられている。

 しかし、このような特徴と一般のワイン愛飲者が実際に飲んだときの印象とが必ずしも一致するわけではない。ワイン専門家と一般消費者とが異なる印象を持つのは当然であり、また日本にない果物や野菜の香りを例にとってワインの品質を表現すれば、経験が浅い消費者が戸惑うのは当然である。
一方、ブドウは、その栽培環境によって、あるいは成熟時期によってそれぞれのブドウ成分濃度が変化することはよく知られている。日本ワインのアロマ(ブドウに由来する香り)やフレーバー(口中でのにおいと味)が、ワイン先進国の同一品種のワインのそれらと比較して、より穏やかでやや薄いとの印象であるとはよく聞く言葉である。それらの印象は何に由来するのだろうか。

 日本の各ワイナリーの製造技術や設備の近年の進歩と充実、それらに伴って得られたワインの品質の向上には目を見張るものがある。ワイン製造が通常のようになされるならば、酒質にとって最も重要なファクターはブドウそのものの品質といってもよい。酒質に及ぼすブドウの品質の寄与率は80-90%という人もいるほどである。ブドウの栽培には、ブドウ畑の土質や気候等、様々な要因が影響するが、ブドウの生育期間の栽培地の気温がブドウの品質の最重要ファクターであることは世界のブドウ・ワイン研究者が広く認めている。




ワインコンクールの結果から見える日本ワインの特徴


 日本ワインの特徴を述べるには、酒質の客観的判定が不可欠である。この判定は2003年に始まった日本ワインコンクール(旧名、国産ワインコンクール)での官能評価結果が非常に参考になる。すなわち、多数のワインメーカーによって多品種のブドウより製造されたワインを、よく訓練された製造技術者を中心としたテイスターが同時に同じ環境で評価しているので、得られた結果は客観性がかなり高い。そこで、詳細は述べないが、ワインコンクール実行委員会がインターネット上に公開した受賞結果(金、銀、銅、奨励賞)を点数化し、ブドウ産地の気温と各ワインの官能評価結果との関連を調べた。

 ブドウ樹は、10℃以下では成長しない、あるいは成熟が著しく遅れる。北半球の温帯地方では10℃以上になるのはおよそ4月1日から10月31日までである。この期間の気温から世界の有名栽培地は、フランスのシャンパーニュやドイツのライン・モーゼルに代表される寒冷地域(第Ⅰ地域)、フランスのボルドーやカリフォルニアのナパバレー中部に代表される冷涼地域(第Ⅱ)、そしてイタリアのトスカニーやナパバレー北部地域(第Ⅲ)、ギリシャや中央スペインが属する亜暑地域(第Ⅳ)、そして南スペインやカリフォルニア・セントラルバレーのある酷暑地域(第Ⅴ)に分けることができる。

 これらの気温帯で日本の栽培地を分けると、第Ⅰ地域には北海道が、第Ⅱ地域には東北地方北部、第Ⅲ地域には東北地方中・南部、長野県、山梨県高地、第Ⅳ地域には甲府盆地、関東、北陸、山陰が、第Ⅴ地域には中部~九州が入る。世界の著名なワイン生産地帯は、第Ⅱと第Ⅲ気候区に集中している。第Ⅰ地区は寒く、第ⅣとⅤ地区は非常に暑いので、栽培できる品種は限られるのである。このようなブドウ栽培地の気温による分類法は、1938年、カリフォルニア大学デイビス校のアメリン教授とウインクラー教授によって提唱されたものである。

 日本ワインコンクールの結果から、第Ⅲ地域で収穫されたシャルドネから製造された白ワインの官能評価点は第Ⅳ及び第Ⅴ地域のそれらよりも高く、第Ⅲ地域のカベルネ・ソービニヨンブドウから製造された赤ワインは第Ⅳ及びⅤ地域のそれらよりも圧倒的に高い評価点となり、総じて第Ⅲ地域のワインは、第Ⅳ及びⅤ地域のワインよりもかなり高い評価点となった。マスカット・ベリーAも同様に、第Ⅲ地域のワインのほうが、第Ⅳと第Ⅴ地域のワインのほうが高い評価点となった。すなわち、ブドウが完熟するならば、気温が低い地域で収穫されたブドウからのワインのほうが高い評価を受けた。

このような日本ワインコンクールの評価結果は、世界のワイン先進国でのワインの評価とよく一致している。日本において、もう一つの重要な白品種はケルナー(トロリンガーとリースリングの交配種)である。このワインはリースリングに似た香りがあり、北海道にとって重要なヨーロッパ系品種である(収穫量の93%が北海道)。この他、アメリカ系品種であるコンコードとナイアガラについては、「日本産ワインのブドウ品種」の項で述べるが、日本ワインコンクールでの評価は非常に低い。

 しかし、これらのワインはフルーティーな香りと甘味を持ち、飲みやすく、また日本の品種別ブドウ収穫量ランキングの第2位と第5位の重要品種であり、それぞれ収穫量の約95%と99%(平成25年)がワインに加工されている。これらの事実は消費者から圧倒的な支持を受けているよい証拠である。コンクールでの低い評価は、製造メーカーがアメリカ系ブドウワインのコンクールへの出品を躊躇していること、また審査員が先入観に捉われ、欧州系ワインの品質を基準に評価していることも一因かもしれない。日本ワインを求める消費者の中には、赤白ワインを問わず、果実の香りが高く、甘味のあるワインの愛好者が数多く存在することを忘れてはならない。




アロマが穏やかな日本ワイン


 上で述べたが、日本ワインの特徴として、そのアロマ(ブドウに由来するにおい)がワイン先進国の同一ブドウ品種のワインと比較して穏やかであることが指摘されている。
穏やかとは、他の成分に比較して相対的に品種に特有な香り成分量が少ないか、あるいは全香り成分の絶対量が少ないということである。シャルドネ白ワインとカベルネ・ソービニヨン赤ワインの代表的アロマ成分はそれぞれテルペンとピラジンである。香り成分が少ない理由をテルペンとピラジンを例にして述べる。

 カベルネ・ソービニヨンはフランスのボルドー地区の主要品種である。ボルドーは第Ⅱ(冷涼)地域にあるが、日本の主産地の山形、新潟、山梨県は第Ⅲ(温暖)地域である。この品種の代表的アロマ成分はピラジンであるが、この成分はまたピーマン、チリ(香辛料)そしてニンジンやレタスにも含まれるため、野菜の香りのするアロマとして知られている。ピラジン類は冷涼地域で栽培されたブドウに特に多く含まれ、ブドウの成熟期(ベレゾーン期といい、初期にはブドウの酸度は高く、糖度はまだ低い)の初期に特に多量に含まれ、成熟が進むと徐々に減少し、過熟期になるとピラジンの閾値以下の濃度となる。ここで、閾値とは、ヒトが嗅覚を起こすために必要なにおいの最小濃度である。ピラジンには多くの誘導体が知られているが、そのいくつかの誘導体の閾値は0.002 ppb と低い。1 ppbは0.0000001%の濃度であるので、信じられない低濃度で存在しても、カベルネ・ソービニヨンの特徴は掴める。しかし、収穫適期を過ぎると閾値以下になることも多い。同じ糖度のブドウを収穫すれば、栽培地の気温の関係から、日本のカベルネ・ソービニヨンのピラジン量のほうが、フランス・ボルドーのそれよりも少なく、カベルネの香りはずっと弱くなることは容易に分かる。

 シャルドネ白ワインの香りはどうであろうか。このワインを象徴する花のようなアロマはテルペンである。テルペンは多くの植物の精油の主成分で、バラや柑橘類のような芳香をもつ。ブドウ中で最も重要、かつ研究が進んでいるテルペンはリナロールとゲラニオールで、前者はスズランやラベンダーの芳香をもち、後者はバラに似た芳香をもち、両者は香水成分として著名である。ブドウの成熟に伴って糖度は増すが、同時にテルペン量も増加する。上述のピラジンの量的変化とは逆である。しかし、冷涼な地域で成熟したブドウのほうがアロマが強いのは、カベルネ・ソービニヨンの場合と同様である。従って、第Ⅰ(寒冷)地域のフランスのシャンパーニュのシャルドネのテルペン濃度のほうが、日本の第Ⅲ(温暖)地域で栽培されたシャルドネのテルペン濃度よりずっと高いことは容易に推定され、この差が日本とフランスのシャルドネワインの品質の評価に重大な影響を与えている要因の一つになっているのであろう。




九州のワイン    


最後に、九州のワインについて。
九州のいくつかのワイナリーで製造した欧州系ブドウワインに水準以上の品質のものがいくつかある。農林水産省果樹統計に載らないほどブドウ収穫量が少ないため、それらのワインの流通量は極めて限定的である。九州は高温多雨なので、欧州系ブドウの栽培は困難を極めていると推定されるが、日照量を増やすため畑に反射板を置いたり、ワイン製造時、スキンコンタクト(発酵前、白ブドウを破砕後、果汁と果皮を接触させ、果皮成分を果汁に抽出する)や低温発酵(フレッシュさ、フルーティーさを増すため13℃以下で発酵)等の技術を用いることによって、アロマやフレーバーを増して酒質の改善を行い、好成績をあげている。ワイン製造法の工夫により高品質ワインを製造している良き例である。

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