更新日:2022年04月01日

日本ワインの比較

日本ワインの産地別種類別


・日本系ブドウ
・アメリカ・ラブルスカ系・フレンチハイブリッド系ブドウ
・ヨーロッパ系赤ブドウ
・ヨーロッパ系白ブドウ
・まとめ


日本の主要ブドウ品種の栽培上の現状と将来性について述べる(2003-2013年の農林水産省特産果樹統計を参考)。

日本系ブドウ(甲州、マスカット・ベーリーA、ブラック・クイーン、ヤマブドウ)

甲州(白):
栽培面積、収穫量ともに減少している。最近11年の年間収穫量は約2,600トンである。ほとんどの収穫は山梨。2008年頃から収穫ブドウの95%はワインに加工され、ワイン専用品種に近い。コンコードに次ぐ単収(単位収穫)を誇り、14.4トン/haである。暑さ、寒さ、雨に強い。

マスカット・ベーリーA(赤):
栽培面積、収穫量ともに減少している。山梨での収穫が圧倒的に多い。生食用からワイン用(約50%)になりつつある。年間収穫量は1,433トン、単収は11.9トン/haと多い。

ブラック・クイーン(赤):
栽培面積、収穫量ともに減少している。年間収穫量124トン/年。単収12.4トン/haと多い。収穫量の50%はワインに加工される。

ヤマブドウ(赤):
岩手、山形、北海道を中心に栽培され、単収は2.2トン/haと非常に低い。独特のブドウとして価値が見直され、栽培面積、収穫量ともに増加傾向にある。年間収穫量367トン。


 

アメリカ・ラブルスカ系・フレンチハイブリッド系ブドウ(コンコード、デラウエア、ナイアガラ、セイベル13053、セイベル9110、セイベル5279)

コンコード(赤):
栽培面積は増えていない。果汁への仕向けは減少している。その一方で、ワイン仕向けは右肩上がりに増加し、ワイン専用品種になりつつある。単収が抜群で17.1トン/ha。

セイベル13053(赤):
北海道が主産地。約86%がワイン、数%が果汁になっている。栽培面積と収穫量が右肩下がりに減少し、将来性に陰りがでてきた。単収は4.7トン/haと低い。

デラウェア(白):
栽培面積、収穫量ともに減少している。ワインへの仕向けは全収穫量の約7%しかなく、生食専用になりつつある。単収は9.9トン/haで、アメリカ系ブドウとしては少ない。

ナイアガラ(白):
長野が主産地で、単収は11.9トン/haと高い。最近11年間の平均で、ワイン(約60%)>果汁>生食の順に使われてきたが、直近の数年では90%以上がワインの製造に向けられ、ワイン用ブドウになりつつある。

セイベル9110(白):
栽培面積と収穫量ともに10年前の半分となった。単収(約8トン/ha)も減少傾向であるが、寒冷地向けのワイン専用品種の中ではよいほうである。長野、新潟、山形、北海道が主産地。

セイベル5279(白):
北海道が主産地のワイン専用品種であるが、栽培面積、収穫量共に激減している。単収は5.5トン/haと低い。希少価値になりつつある。北海道が主産地。


 

ヨーロッパ系赤ブドウ(カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン・ツヴァイゲルトレーベ、メルロー、ピノ・ノワール)

カベルネ・ソーヴィニヨン:
栽培面積、収穫量とも増加している。単収は平均7.8トン/haであるが、気候が原因と思われる年によるバラつきが大きい。山梨、山形、兵庫、長野が主産地。

カベルネ・フラン:
栽培面積、収穫量ともに増加している。単収はカベルネ・ソービニヨンより低い平均6.4トン/ha。

ツバイゲルトレーベ:
栽培面積は僅かに減少傾向。年間収穫量は274トン。北海道が主産地だが、単収が5.0トン/haと低い。

メルロー:
ヨーロッパ系ブドウの中で単収が最も高く11.8トン/haで、年間収穫量は2012年、初めて1,000トンを超えた。長野、山形、兵庫、新潟、山梨、岩手、北海道と気候区Ⅰ~Ⅳにまたがる様々な地域で栽培され、将来性がある。

ピノ・ノワール:
栽培面積、収穫量ともに増加している。単収は年々減少し、平均4.6トン/haと低く、近年さらに下がり3トン/ha前後。長野、北海道、青森が主産地。


 

ヨーロッパ系白ブドウ(ケルナー、シャルドネ、ソービニヨン・ブラン、ビノ・ブラン、ニューラー・トゥルガウ)

ケルナー:
栽培面積はやや減少しているが、収穫量はさらに減少傾向にある。単収は6.7トン/haでドイツ、オーストリアブドウの中ではよいほうである。主産地は北海道で、長野で少量収穫される。

シャルドネ:
栽培面積、収穫量ともに増加。2012年収穫量が1,000トンを超えた。10年間平均の単収は7.1トン/ha。長野、山形、兵庫、新潟、山梨など全国各地で栽培され、品質評価も高く将来性がある。

ソーヴィニヨン・ブラン:
栽培面積、収穫量ともに増加しているが、単収が5.7トン/haと低く、2009-2013年の平均収穫量は48トンだけで低レベル。長野が主産地、島根でも若干収穫。

ピノ・ブラン:
近年、栽培面積、収穫量ともに若干増加した。単収は6.3トン/haと他のヨーロッパ系品種と同レベル。収穫量は年23トンのみで、他の品種と競合状態。

ミューラー・トゥルガウ:
栽培面積、収穫量ともに急速に減少している。単収も4.9トン/haと悪く、年間収穫量は249トン。北海道が主産地で、長野でも栽培されている。


 

まとめ

2003-2013年の栽培面積と収穫量がともに増加しているブドウ品種は、コンコード(アメリカ系)、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、ピノ・ノワール、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ブラン(以上ヨーロッパ系)、ヤマブドウ(東アジア系)。

両者の増減がない品種は、ツヴァイゲルトレーベとメルロー(ヨーロッパ系)、甲州(日本系)である。

栽培面積と収穫量が減少し、将来が見通せない品種は、ミューラートゥルガウ、ケルナー(以上ヨーロッパ系)、セイベル系3種(フレンチハイブリッド)、ナイアガラ、デラウェア(アメリカ系)、ブラック・クイーン、マスカット・ベーリーA(日本系)であると思われ、将来、本稿で紹介できなかった品種と入れ替わる恐れが十分にある。

最後に、北海道のブドウ栽培に触れる。可能性を秘めた広大な北海道で栽培されている主要な品種、ツヴァイゲルトレーベ、セイベル、ピノ・ノワール、ケルナー、ミューラー・トゥルガウの単収を他地域の同じ品種の単収と比較すると、ツヴァイゲルトレーベを除いてかなり低く、品種によっては数分の一でしかない。大規模栽培や寒冷気候に起因する栽培性の問題を克服し、採算性の課題を改善すれば、日本ワインの原料問題の解決になると期待が膨らむ。


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